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iPS細胞の実用化で薬の副作用の評価が簡単になる [再生医療]

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<薬の作用はどうすれば見ることができるのか>


毎日毎日、世界中で膨大な数の物質が、新薬として使用できないかどうか研究されている。

その実用性は0.03%だと言われる。

3,000種類の物質を調べてみて、一つが薬として成功するかどうかという、低い確率だ。


でも、これらの薬が成功に結びつかないいくつかの要因がある


1.薬の作用を試験管内の細胞でまず調べるのだが、これに用いられる細胞は試験管内の培養条件に適応しているために人間の体の中とは異なる反応を示す場合が多い。

2.細胞研究でうまくって、次に個体研究では動物を使う。でも、動物実験でうまくいっても、動物と人間では薬への反応が違うことが多い。


ここまでの段階でかなりの薬が振り落される。

そして次の段階もある。


3.動物実験で問題ないとなり、人間のボランティアなどを用いての臨床実験が始まる。これをパスしたら市場に出る。

けれども、数万人に一人の特異体質の人に発生してしまう重篤な副作用はこの臨床試験でもわからない。


でも、ジェンナーの時代のような荒削りな臨床実験は絶対にできない。

Melingue_Jenner.jpg

これらの問題を乗り越えることができるかもしれないのがiPS細胞を使った研究である。


==引用==

開発中の薬の副作用、iPS細胞で検査

読売新聞 6月29日(日)11時47分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140628-00050160-yom-sci

 政府は、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使い、開発中の医薬品が心臓に起こす副作用をチェックする技術の開発を本格化させる。

 人間を対象にした薬の試験を細胞に替え、薬の開発費の削減や再生医療産業の振興につなげる狙いがある。2016年度までにオールジャパン体制で新技術を確立し、国際的な薬の審査基準に反映させたい考えだ。

 医薬品が販売中止となる理由では、不整脈など心臓の副作用が最多だ。製薬会社は販売前に、動物や人間で副作用の検出試験を行っているが、動物では薬に対する反応が人と異なり、被験者には副作用のリスクが伴う、という課題がある。

 新技術は、心臓の筋肉(心筋)の細胞を人のiPS細胞から作り、開発中の薬を投与して心臓の働きに異常が起きないかを調べる手法だ。今回、実際の人とほぼ同じ特性を持つ心筋細胞を作り、製薬会社が開発の序盤で薬の副作用を見つけ、動物や被験者の試験をせずに済むようにする。

==引用==


<iPS細胞のライブラリが新薬開発に貢献する。>


実際に、稀に起こる副作用というのは数万人に一人の頻度で起こるようなものである。

これは、事前の臨床検査(数千人規模)で、運よくそういう人が複数含まれない限り(含まれた人は運が悪いが)、わかりようがない。

市場に出て、販売されて初めてこれがわかる。


これを、30万人程度から髪の毛や血液などをいただき、そこに含まれる細胞をもとにiPS細胞のライブラリを作ることができれば、30万種類の様々な遺伝子配列を持つ細胞の反応を見ることができる。

これにより、市場に出てから起こるトラブルを回避することができる。


また、多分化能を持つ細胞であるiPS細胞から作ったさまざまな臓器の細胞は、長期培養されたものではなくてできたばかりのものであるから、より生体に近い反応が期待できる。

日本人30万人分でライブラリを作ることができれば、かなりたくさんの薬の開発効率が上がるし、市場に出てから問題が起こって開発費を棒に振るという危険性も少なくなる。

そうすれば、今よりももっと多くの物質について、それが新薬となりうるかどうかの開発ができるのである。


そういうことを考えると、大人の髪の毛の毛根の細胞や血液の白血球から作ることのできるiPS細胞の可能性というのは実に大きなものであることがわかる。



ま、それでもかなりの金はかかるのだが。

その意味では、安価にできる技術であるとしてSTAP細胞への期待はものすごく大きかった。

それが全くのねつ造であったことで、医療・製薬関係者の落胆と怒りはものすごいものがあるのだ。




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